東京地方裁判所 昭和40年(ワ)11598号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告は会社と取締役との間の取引についての社員総会の認許は、事前に受ける必要があると主張し、原告は事後でも差支えない旨主張してこれを争うので考えてみるのに、有限会社法三〇条により準用される同法二九条の規定上、右の認許を受けるに当り社員総会に於て取引に付重要な事実を開示することが要求されるのは、会社が損害を蒙るのを未然に防止するためであるから、右認許は被告主張のとおり事前になされる必要があると解すべきである。
しかして、事前の認許なくしてなされた自己取引の効力は無効と解すべきであるが、その後改めて所定の要件を備えた認許の決議がなされた場合は当該取引はその時から有効となるものと解するのが相当である。けだし前記有限会社法三〇条の規定は取締役が会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図るのを防止することを目的とするのであるから、事後社員総会において当該取引が会社になんら損害を蒙らせる虞れなしと認めてこれを承認した以上、その時に認許があつたものとして、爾後右取引を有効と取り扱うことを妨げる理由はないからである。
本件についてこれをみれば前記のとおり訴外有限会社仲川製作所は本件手形を原告に裏書譲渡するに当り社員総会の事前の認許を得ていなかつたから右譲渡行為は無効であるけれどもその後昭和四一年二月一日右訴外会社の総社員により書面による認許の決議を得たから、前記裏書は右同日以後は有効として取り扱われるべきである。(佐藤安弘)